「出たら芽」甲斐国まで巻き込もうとしている二人の争い

「出たら芽」甲斐国まで巻き込もうとしている二人の争い
2019年11月8日 No Comments 架空歴史小説「出たら芽」 wpmaster

さて、結城禿晴が美川大橋で一息ついている頃、加賀金沢の南の山手、サウスクボカイナに住む食い意地が張り詰めている歌人、木村食之助が3つの数字を足したり引いたり掛けたり割ったりしてぶつくさ言っていた。

その数字が5と5と1だった。

足した答えが11になると。
「いいなあ。うん。しかし11個じゃイマイチなあ。11箱ならなあ!」
引いた答えが-1になると、
「あかん。アホちゃうか!」
掛けた答えが25になると、
「1は意味が無いやろ!まあ25個あればなあ。」
割った答えが1になると。
「一箱じゃ足らんのや!」
と訳の分からない事を言っていた。

そして、
「こんなに忙しい時に何が『 出たら芽』じゃ!書いとる暇なんかあるかい!結城禿晴はしばらく美川大橋の上でボーッとしとけ!」

と言って仕事に取り掛かろうとした時だった!

食之助のスマホが「ラインっ。」と鳴った。
LINEの、‘こっそりLINE ’の通知音だった。

食之助は、
「誰やねん?」
と言いながらスマホを見てみると、その相手は山梨で生き返った武田勝頼だった。
内容は、
「時間がある時にお電話くだされ!」
だった。

食之助は相手を見てまず考える。
こいつの居る山梨?
ぶどうか?
しかしぶどうはいらん。
ほうとうも要らんな。

ここで食之助の判断は決まる。

「あかん。こいつのおるとこには食いたいもんは無い。放っとこ。」

そう、食之助はまず相手から何か、美味しい物が手に入るかどうかで付き合いをするかしないかを決めるのだ。

呆れた歌人なのだ。

だから食之助は武田勝頼からのLINEには返事をしなかった。

さて、武田勝頼はそんな木村食之助の事は承知の上だ。

だからLINEが「既読」になって返事が来ない理由もわかっていた。

そこで武田勝頼は新たにLINEでメッセージを送った。

その内容は、

「お忙しいところすまぬが、美味い中華街の江戸清の肉まんが手に入ったのじゃ。それを届けたい事もあり、話をしたいので連絡を下さらぬか?」

この辺りは武田勝頼もよく心得ていた。

そして食之助は武田勝頼の作戦にまんまとはまったのだ。

食之助は「江戸清の肉まん」と聞いて直ぐに武田勝頼に電話をした。

勝頼はまずは江戸清の肉まんの話しをした。

そして話題を父の武田信玄の事に変えた。

勝頼は食之助の気を引こうと関西弁で、
「それがなあ、親父がアホなこと言いよるんや。それがなあ、そっち、加賀百万石金沢におるらしい、今川義元が手を貸してくれと言うて来とるんよ。何やら、結城禿晴を討つからと。今の時代に今川義元は何をボケた事を言うとるんかと聞きたかったんよ。そっちになんか情報入ってないんかなあ?」

と。

食之助は、

「そんなん知らん知らん。金沢のサウスクボカイナにはそんな話題ひとつも入って来んわ。」

勝頼は、

「しかし結城禿晴には曲を書いとるんやろ?結城禿晴からも連絡入って来んのか?」

食之助は、

「おう、アイツは上方から551の豚まん手に入れた時くらいしか連絡して来んな。」

勝頼は、

「じゃあ今川義元からは何も言うて来んか?」

「たまに静岡の美味い茶を送ってくれるくらいやな。そんなことはどうでもええから、江戸清の肉まん送ってくれな。ほな。」

と言って電話を切ってしまった。

勝頼は、
「似ても焼いても食えん?いや、食う奴じゃ!」

と言って諦めた。

その時、隣の部屋では父の信玄が軍師の山本勘助を呼んで何やら策を練っているようであった。

さて、武田勝頼は戦を嫌うタイプなのに対して父の信玄は戦を好む武将であった。

武田勝頼は信玄が余計な事には関わって欲しくないと思い、なんとか今川義元と結城禿晴に和議を結ばせる方法が無いかと頭を働かせていたのである。

父の信玄が動くとこの戦、加賀の前田を巻き込み、隣国の北条氏も黙っていなくなると読んだ勝頼はなんとかこの争いを収めなくてはと危機感を抱いていた。

そして勝頼は一人金沢に向かう事を決めた。

その頃、結城禿晴は美川駅の前の駐車場に居た。

禿晴は軽トラのルームミラーで、カツラをしっかりチェックしていた。

「これなら鶴見美川守薄毛には絶対にバレる筈がない!」

そう言って軽トラから降りて駐車場を歩いている時だった。

「ユキさん!」

と、どこかで聞いた声が!

この「ユキさん」と呼ぶのはあのお方しかいない!
禿晴が結城ひろしと言う名前で歌を嗜んでいる事を知っているあのお方しかいない!

禿晴は振り返った!

すると美川の寒雲(さむくも)太夫が立っているではないか!

その後ろには寒雲太夫の黄色い車が駐車場にフイットして止まっていた!

禿晴は全く気付かなかった!

そして何より驚いた事は、どうしてカツラを付けているにも関わらず寒雲太夫は俺だと分かったのかと言うことだった!

禿晴は冷静を振舞って、

「おお、寒雲太夫殿!久しぶりじゃのー!」

と言ったが内心では、
「どうして?どうして?」
とツイートしていた。

寒雲太夫は、
「ユキさん、何してるの?こんなところで?」

と聞いてきた。
しかし禿晴がカツラを付けている事など全く気にかけていない。

禿晴は、

「おう、久しぶりに駅の二階の‘ 37カフェ’で茶でもしばこうかと思ってのー。」

寒雲太夫は、

「あら、そうなの!じゃあ久しぶりに一緒にお茶しましょう!」

と言って来た。

禿晴は、どうしてカツラに気付かないのじゃと思いながら、

「おう、そうであるな!しばきましょう!しばきましょう!」

と言って二人で駅の二階に向かった。

ここで寒雲(さむくも)太夫について少し述べておこう。

寒雲太夫は寒雲(かんうん)という名前で歌を嗜んでいる。

2016年に木村食之助が「素顔」と「春はアトリエ」という二曲を書きリリースしている。

Amazonで買ってくだされ。
素顔 https://www.amazon.co.jp/dp/B01FFVT93C/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_XFmXDbNXZTEAD

さて、その時、丁度福井からの電車が着いて乗客が降りて来た。

そして二人が階段を上がりかけた時、

「ひろしー!」

と黄土色の声が美川駅の構内に鳴り響いた!

なんと結城ひろしのファンクラブ、
「結城ひろしを囲む40年代の会」の会員の一人が禿晴を見つけて叫んだのである!

そしてその会員は、

「ひろしー!カツラ!カッコイイー!」

とまた叫んだのだ!

その声を聞いて寒雲太夫が、

「あら、ユキさん、そのアタマ?」

と初めて気づいたのであった。

禿晴は、美川駅の階段で悟った。

「こりゃあかん。」

と・・・。

つづく

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